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今回は、山本周五郎が晩年に著した佳品三遍の詰め合わせでございます。先の二本は、完全な撮り下ろし。遺作となった枡落しは、2022/7月配信作品です。
最晩年の三遍。40年をかけて書き続けた周五郎の疲労がにじみだすよう。それだけに味わい深いと思うのは私だけでしょうか?
お聴きください。
一、へちまの木(ちいさこべ収録)
1966年(昭和41年)3月 『小説新潮』掲載作品。
山本周五郎、このとき六十三才。心臓発作に肝機能の低下と、体調の不良を発し、体力も急激に衰えて参ります。前年は長編「ながい坂」を書き上げたあと、一年間の休養を宣言いたしております。下肢の痙攣、自動運動という奇病にもみまわれ、それでも書くのはやめられない。そんな晩年——
へちまの木の主人公、房二郎は、旗本の三男坊で、あまり将来の展望もない。そのくせ、婚活をきらって、家をでて、記事屋なんていうやくざな商売につこうとする。当時は、小説家であっても、遊び人のろくでなしのつく商売と下に見られていた頃であります。さて、房二郎の就活は、うまくいくでしょうか、というお話。
※この動画のAudioBookはすべて新たに撮り下ろしたもので、再利用コンテンツではございません。
■登場人物の紹介
池原房二郎……旗本の三男。婿養子になるのを嫌い、家出をし、瓦版屋に。
木内桜谷……瓦版屋「文華堂」の記事屋。房二郎の指南役。
おるい……仕立て物屋。房二郎の部屋の貸主。
西川文華……「文華堂」の主人。おそでの尻にひかれている。
おそで……「文華堂」の主婦で金主。実質的なオーナー。
おかつ……「文華堂」の女中。
常さん……「文華堂」の絵描き。
源さん……「文華堂」の版木彫り。
松やん……「文華堂」の摺師。
木谷桜所……「文華堂」の記事屋。
木原桜水(平次)……「文華堂」の記事屋。
段平……瓦版の売り子。
久兵衛……瓦版の売り子。
おたね……木谷桜谷の女房。
おつゆ……飲屋「沢茂」の小女。
おつま……飲屋「沢茂」の小女。
■用語集
ぞろっぺい……いいカゲンでだらしないこと
郡代……グンダイ・幕府の職制で、勘定奉行所属。幕府の直轄領の行政を担当
赤絵……浮世絵版画の一種
わ印……春画
家作……カサク・貸し屋
半挿……ハンゾウ・水差し
香煎……コウセン・焦がし麦の異称
雅文……ガブン・優雅な文
景物……ケイブツ・四季折々の趣のある事物
■「一、へちまの木」目次
0:00 「へちまの木」一
13:44 「へちまの木」二
26:40 「へちまの木」三
38:14 「へちまの木」四
50:22 「へちまの木」五
1:02:58 「へちまの木」六
1:15:30 「へちまの木」七
1:28:10 「へちまの木」八
二、あとのない仮名 (あとのない仮名収録)
1966年(昭和41年)6月 『別冊文藝春秋』
こちらも六十三才の作品。この年は、へちまの木と、あとのない仮名の二本きりの発表となった。周五郎の命脈もいかばかりといったところ。奥さんに、小説家の自殺したい気持ちをもらしたのもこのころ。
体は衰えても、かわらず一家の大黒柱で、「こんなことでは飯の食い上げになってしまう」とまた筆を執る。女房子に見捨てられる、あとのない仮名の親父の姿は、このときの周五郎先生の「気持ち」というものを反映していたのかもしれません。
■登場人物
源次(もとじ)……植木職。仕事も家族もほうって、遊蕩する。
お兼……居酒屋「梅八」の女主人。
おとよ……旅籠「信濃屋」の女主人。源次の世話をする。
多平……源次の弟子。
おろく……信濃屋の女中。
おつね……源次の女房。
みつ公……源次の子。
秀次……源次の子。
岩月卯兵衛……刀脇差「岩紀」の主人。源次の得意先。
庄助……「岩紀」の下男。
紀平……「岩紀」の隠居。
おちよ……老女。
善五郎……庭師。
清左衛門……銘茶商「伊豆清」の主人。源次の得意先。
角造……「伊豆清」の向島寮の庭番。
勇吉(おすみ)……「伊豆清」の向島寮の女中。
忠吉……「植甚」の仲間。
清七……根岸在。「植甚」の一の身内。源次の兄貴分。
おこん……清七の女房。
福太……「植甚」の仲間。
おたい……源次の相手。
おすが……源次の相手。
■用語集
こうこ……漬物
八間……ハチケン・平たい大型の釣り行灯
風体……フウテイ・なりかたち
女衒……ゼゲン・女性を遊女屋などにある商売する人
山家……ヤマガ・山中にある家
実生……ミショウ・種子から発芽した植物のこと
荒磯……アリソ
後架……コウカ・トイレ
人別……ニンベツ・人別帳。戸籍
出銭……デセン・出費
屠所……トショ・食肉をおろす場所
■この動画の目次
1:41:55 あとのない仮名 一
1:54:10 あとのない仮名 二
2:06:31 あとのない仮名 三
2:18:30 あとのない仮名 四
2:32:47 あとのない仮名 五
2:45:19 あとのない仮名 六
2:59:51 あとのない仮名 七
3:11:02 あとのない仮名 八
3:23:15 あとのない仮名 九
3:36:24 あとのない仮名 十
3:48:47 あとのない仮名 十一
三、枡落し (おごそかな渇き収録)
■小説の達人の残した遺稿。1967年(昭和42年)3月 『小説新潮』
書かれたのは、おそらく前年の昭和41年。ところが発表は作者の急逝で、死の翌月ということになってしまいました。遺作でございます。
山本周五郎、本名清水三十六(さとむ)が亡くなったのは、昭和四十二年二月のこと。その年の一月からは、「作家生活の総決算」のつもりで、【おごそかな渇き】の新聞連載が始まった。周五郎の急逝で、おごそかな渇きは絶筆に。
変わって三月。小説新潮に遺稿として掲載されたのが、本【枡落し】である。
書かれたのは昭和四十一年のことで、完結された作品としては、これが最後の【小説】となった。作者得意の「下町もの」で、五月に開始された執筆が完了したのは十月のこと。急激に体力の衰えた周五郎は、序盤少しずつ書きためることしか出来なかったらしい。枡落しは、人殺しにまで身を落とした夫をもつ、女職人「おみき」の人情物語。
周五郎が最後に書こうとした長編は、「現代の聖書」
最後に著した短編は、いつもと変わらない「庶民のこころ」であった——。
◆登場人物紹介
おみき……腕のたつべっこう職人。
おうめ……おみきの娘。
芳造……べっこう屋「伊予巴」の職人。
千太郎……おみきの夫。道楽に走り人殺し凶状となる。
新五郎……おみきの父。
吉兵衛……長屋の差配。
藤吉……長屋の差配。
縄屋喜六……新しい長屋の家主。
勝兵衛……宿屋「越中屋」の主人。
太吉……「伊予巴」の番頭。
幸助……千太郎が無実であると、おみきに訴える。
大蛇の辰……幸助と同牢の者。
◆用語集
人別……ニンベツ・人別帳。江戸時代の戸籍
凶状……キョウジョウ・凶悪な犯罪
わ印……猥本
たいまい……江戸時代の禁制をうけて、商人らは、たいまいをスッポンの甲と称して売りに出した。そのため、べっこう、とも呼ばれるようになった。
七難九厄……シチナンクヤク・男女とも、七と九の年回りには、災難が起こりがちである、という俗説
定命……ジョウミョウ
小刀……サスガ
風儀……フウギ・風紀
頓死……トンシ・急死
小一里……一里は約四キロ
いちがいに……ひとくちに
伝法……デンポウ・粗暴で無法な振る舞い。また、勇み肌であること
枡落し……鼠を捕る仕掛け
■この動画の目次
4:01:53 枡落し 一
4:14:42 枡落し 二
4:26:18 枡落し 三
4:39:58 枡落し 四
4:52:27 枡落し 五
5:07:10 枡落し 六
5:19:31 枡落し 七
5:32:40 枡落し 八
5:44:02 枡落し 九
#山本周五郎 #朗読 #時代小説 #七味春五郎
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山本周五郎の長編はこちらです
■https://www.youtube.com/watch?v=HGjbhb2x0Tw&list=PLbLffmEwTDppcuNWBi9S2xE09KMYIqMhE
半七捕物帳はこちらです
■https://www.youtube.com/watch?v=iUobBtu-A4g&list=PLbLffmEwTDppu8wEkKJ4U1gfJyIrIuDVd
銭形平次捕物控はこちらです
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