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📚あらすじ
小野の里へ戻った於通は、乳母のお沢と再び暮らし始める。だが、都へ出て学び、自分の力で人生を切り拓きたいという思いは、日に日に強くなるばかりだった。
そんなある夜、酒に酔った“のら息子”三蔵が帰ってくる。
母のお沢からは素行の悪い息子と見られている三蔵だが、その実、池田勝入のもとで青鷺衆を率い、隠密や謀略に関わる男だった。彼は於通に都行きを手助けすると持ちかけ、夜の小野の里から連れ出す。
一方、三蔵にはもう一つ、夜明けまでに果たさねばならない密命があった。
犬山攻略を目前に、黄金による懐柔と内応工作はすでに進んでいる。三蔵はその成功を池田勝入へ報告するため、於通を峠の堂に待たせ、闇の街道へと駆けてゆく。
酔いどれの放蕩息子に見えた男が、実は天下の戦を裏側から動かしていた――。
於通の新たな旅立ちと、犬山をめぐる策謀が交差する一篇です。
📚登場人物一覧
* 於通(おつう)
小野政秀の娘。十七歳。幼くして戦乱の中で父と家を失い、安土城での奉公や本能寺の変後の逃避行など、過酷な経験を重ねてきた。松琴尼のもとを離れ、都へ出て絵や歌、学問を修め、自分の力で人生を切り拓こうとしている。気性が強く、聡明で行動力に富む。
* 三蔵(さんぞう)
お沢と日置大炊の息子。母からは「のら息子」と嘆かれているが、実は池田家に雇われた青鷺衆の頭。隠密や乱波として働き、犬山攻略の裏工作にも深く関わっている。酒好きで粗野だが、機転と行動力に優れ、池田勝入から士分への取り立ても約束されている。幼い頃から於通を知る。
* お沢(おさわ)
於通の乳母で、三蔵の母。夫亡きあと、小野の里で質素に暮らしている。亡き小野政秀から於通の将来を託された責任を重く受け止め、都へ出ようとする於通を必死に引き止める。放蕩する実子・三蔵にも心を痛めている。
* 日置大炊(へき おおい)
お沢の亡夫で、三蔵の父。小野家に仕え、幼い於通を戦乱から守り、わが子同然に育てた。於通の将来を案じて松琴尼のもとへ預けた人物。すでに故人。
* 小野政秀(おの まさひで)
於通の父。小野の里を治めた武将。信長に従ったのち戦死する。生前、お沢夫婦に、万一の際には娘・於通を頼むと言い残していた。
* 松琴尼(しょうきんに)
竹中半兵衛の妹。於通をしばらく預かり、尼院で暮らさせていた。しかし早くから、於通が一生尼院に留まる性質ではないことを見抜いていた。
* 池田信輝/勝入斎(いけだ のぶてる/しょうにゅうさい)
池田家の武将。三蔵を青鷺衆の頭として使い、犬山攻略に向けた密命を与える。三蔵の働きを評価し、任務を果たせば士分に取り立てると約束している。
* 中川勘右衛門(なかがわ かんえもん)
犬山城主。三蔵の語りの中で、その死が犬山攻略の重要な転機として語られる。
* 織田信長(おだ のぶなが)
於通の過去に大きく関わる人物。小野政秀の遺児である於通を憐れみ、安土城の大奥へ女童として奉公させた。安土での体験は、於通が都や文化に強く憧れる原点の一つとなった人物。
📚用語集
去就
きょしゅう
どちらの陣営につくか、身の振り方を決めること。
説客
せっかく
相手を説得する役目を担う者。
股肱
ここう
主君にとって腕や脚のように頼りとなる重臣。
首尾両端
しゅびりょうたん
両方に気を持ち、どちらにも決めきれない状態。
密使
みっし
秘密の命令や交渉を担う使者。
朱印
しゅいん
主君が朱印を押した正式な文書。
封国
ほうこく
領地として与えられる国・地域。
去就静観
きょしゅうせいかん
どちらにつくか決めず、成り行きを見ること。
人質
ひとじち
忠誠を保証するため、家族などを相手方へ預けること。
首鼠両端
しゅそりょうたん
どちらにつくか決めず、両方の様子を見ること。
一味承諾
いちみしょうだく
同じ陣営に加わることを正式に了承すること。
青鷺衆
あおさぎしゅう
池田家に属する外部雇用の実働集団。機動力の高い者たち。
外者
そともの
藩の正式な家臣ではない雇われ人。
搦め手
からめて
城の裏手・裏門方面。
物見
ものみ
敵情や周囲の様子を偵察する役目。
腰兵糧
こしびょうろう
行軍時に携帯する簡便な食糧。
陣触れ
じんぶれ
出陣の命令・布告。
大物見・小物見
おおものみ・こものみ
軍勢の前後や周囲を偵察する役目。
✿作者と作品について
◆作者:吉川 英治(よしかわ えいじ)
1892年(明治25年)- 1962年(昭和37年)。日本の大衆文学を代表する小説家。神奈川県出身。本名は英次(ひでつぐ)。『宮本武蔵』『三国志』『私本太平記』など、歴史を題材にした数多くの国民的ベストセラーを執筆し、「国民文学作家」と称された。その作品は、平易でありながら格調高い文章で、幅広い読者層から支持を得ている。1960年、文化勲章受章。
◆作品:『新書太閤記』(しんしょたいこうき)
吉川英治が1938年(昭和13年)から新聞連載を開始した歴史小説。豊臣秀吉の生涯を、織田信長に仕える以前の若き日から天下統一を成し遂げるまで、生き生きと描いている。本作は、従来の講談や立身出世物語としての秀吉像に、人間的な深みと魅力を与え、新たな「太閤記」として絶大な人気を博した。戦国時代の動乱を背景に、秀吉をはじめとする武将たちの葛藤や野望、人間模様が巧みに描出されている。
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■新書太閤記再生リスト
https://x.gd/2SFJx
■この作品は、当初読売新聞に1939年1月1日から1945年8月23日まで、掲載されました。
以降の原稿は、「続太閤記」としていくつかの地方紙に掲載されました。前半の中断は、終戦が原因となったそうです。
日本の天下を統一した豊臣秀吉の生涯を昭和の文豪が描く!