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アフタートークのBGMは、「きんべえ物語主題歌 女房関白」
『おたふく』あらすじ
日本橋はせがわ町の彫金師・島崎来助のもとに、腕は立つが酒に溺れがちな内弟子・貞二郎がいた。師匠夫婦は、貞二郎を立ち直らせるため、長唄の師匠おしずとの縁談を思いつく。
おしずは自分を「おたふく」「のろま」と笑う三十六歳の女性。しかしその心には、長い年月ひそかに貞二郎を慕い続けてきた純情があった。やがて二人は夫婦となり、貞二郎はおしずの明るさと優しさに少しずつ心をほぐされていく。
ところが、貞二郎はおしずが大切にしていた自分の彫金作品を見つけ、過去を誤解して激しい嫉妬に苦しむ。姉を思う妹おたかの涙ながらの告白によって、貞二郎はおしずの長年の恋心を知る。
笑いと涙のなかに、女のいじらしさ、夫婦の情、そして山本周五郎らしい人間の温かさがにじむ一篇。
山本周五郎は晩年にこんなことをいったらしい、
自分が死んだら、そのあとでぼくの小説を読んでほしい。かあさんがたくさん出てくるから。
山本周五郎は晩年人間嫌いになったようだが、若い頃はそうでもなく、とくに人の観察をよくしていた。きんさん姉妹のやりとりもよく聞いていたようです。
「ぼくの小説の半分はかあさんのおかげで書けた」
文豪・山本周五郎の小説家人生に多大な影響を与えたのは、きん夫人でありました。
きんべえと呼んだおくさん
死の数日前に感謝の想いをつたえたおくさん
そんな吉村きん一家を題材にした、おたふく三部作。外伝として水たたきも収録する予定ですが、ぜひお聴きください。
📚登場人物一覧
📗おしず/杵屋勘志津
本作の中心人物。長唄の師匠。自分を「おたふく」「のろま」と言うが、実際は色白で美しく、明るく情の深い女性。若いころから貞二郎をひそかに慕い続けていた。
📗貞二郎
島崎来助の内弟子で、腕の立つ彫金師。御家人の二男。寡黙で職人気質だが、酒に溺れがち。おしずと夫婦になり、彼女の優しさに強く惹かれていく。
📗島崎来助
はせがわ町の名高い彫金師。鉄地に牡丹を彫る名人で、「安永宗珉」とも呼ばれる。貞二郎の師匠。温厚で謙遜な人物。
📗おその
来助の妻。貞二郎の行く末を案じ、おしずとの縁談を進める。人情味があり、行動力のある女性。
📗お市
来助夫婦の妹娘。嫁ぎ先から遊びに来た際、貞二郎の相手におしずがよいのではないかと提案する。
📗おたか
おしずの妹。前作で信濃屋へ嫁いだ。明るく率直で、姉を深く愛している。本作後半では、貞二郎の誤解を解く重要人物。
📗信濃屋の友吉
おたかの夫。直接の出番は少ないが、おたかの嫁ぎ先として登場する。
📗新七
おしずとおたかの父。物語内では過去の人物として語られる。
📗おしずの母
すでに故人。おしず姉妹の過去を語るうえで触れられる。
📗貞二郎の兄弟弟子たち
平助、銀造など。独立していった弟子たちとして語られる。
📗鶴村仁左衛門
小網町の大きな木綿問屋の主人。貞二郎の彫金作品を長く贔屓にしていた。おしずは彼を通して、貞二郎の作品を密かに注文していた。
📗鶴村のお夏
鶴村の家の娘。おしずが稽古に通っていた相手。
📗五郎吉
本所横網の裏長屋の大家。酒屋「猿島屋」を営む。抜け目のない因業大家として描かれる。
📗長太郎
同じ長屋の子供。鋳掛屋の辰次の子。貞二郎に「貞さんちのおばさんのおじさん」と呼びかける。
📗辰次
長屋の鋳掛屋。長太郎の父。名前のみ登場。
📗金助町の人々
おしずの昔話に登場する人々。畳屋のおばさん、熨斗屋の啓さん、およんちゃんなど。おしずの回想世界を彩る。
📚用語集
📙彫金師
ちょうきんし
金属に模様や絵柄を彫る職人。
📙牡丹
ぼたん
花の名。来助が得意とする図柄。
📙好事家
こうずか
風流・骨董・美術などを好む人。
📙安永宗珉
あんえいそうみん
名工・横谷宗珉になぞらえた称。作中では来助の名声を示す。
📙横谷次兵衛
よこやじへえ
江戸時代の金工家・横谷宗珉のこと。
📙目貫
めぬき
刀の柄につける装飾金具。
📙赤銅
しゃくどう/すあか
銅を主体とする金属素材。作中では「すあか」と表記。
📙前金具
まえかなぐ
莨入や袋物などの前面につける飾り金具。
📙莨入
たばこいれ
煙草を入れる袋物。
📙金工
きんこう
金属工芸。またその職人。
📙華
はな
ここでは華道、生け花。
📙内弟子
うちでし
師匠の家に住み込んで修業する弟子。
📙御家人
ごけにん
江戸幕府に仕えた下級武士。
に📙がみばしった
にがみばしった
男らしく渋みのある顔立ちや雰囲気。
📙切羽
せっぱ
刀装具の一部。作中では彫金作品の部位・意匠として出る。
📙たがね
金属を彫るための工具。
📙図柄
ずがら
模様や絵柄。
📙玄人筋
くろうとすじ
その道に詳しい専門家・業者。
📙木綿問屋
もめんどんや
木綿を扱う問屋。
📙帯留
おびどめ
帯締めにつける装飾品。
📙平打
ひらうち
平たく作られた簪や金具。
📙象眼
ぞうがん
金属や木などに別素材をはめ込んで模様を作る技法。
📙長唄
ながうた
三味線音楽の一種。歌舞伎舞踊などにも用いられる。
📙杵屋
きねや
長唄の家名・流派名に多い名。
📙賃縫い
ちんぬい
賃金をもらって縫い物をする仕事。
📙櫛をひく
くしをひく
櫛を作る、または櫛職人として働くこと。
📙縹緻
きりょう
顔立ち。美貌。
📙開山忌
かいさんき
寺を開いた僧の命日に行う法会。
📙西誉上人
せいよしょうにん
増上寺の開基とされる僧。
📙塔頭
たっちゅう
大寺院の境内にある小寺院。
📙法筵
ほうえん
仏教の法会・説法の場。
📙四方輿
しほうごし
四方を囲った輿。
📙散花
さんげ
法会で花を撒く儀式。
📙方丈
ほうじょう
寺の住職。また住職の居所。
📙布衣
ほい
平服。または公家・武家の装束の一種。
📙素袍
すおう
武家の礼装の一種。
📙退紅白張
たいこうしらはり
行列に従う者の装束。難語だが、華やかな従者の衣装として理解すればよい。
料理茶屋
りょうりぢゃや
料理を出す茶屋・料亭。
下戸
げこ
酒を飲めない人。
饒舌り
おしゃべり
よくしゃべること。
小皺
こじわ
細かいしわ。
膚
はだ
皮膚、肌。
五尺
ごしゃく
約150センチ前後。
後添
のちぞえ
後妻。
のらくら者
のらくらもの
怠け者、働きのない者。
仲人
なこうど
結婚を取り持つ人。
本所横網
ほんじょよこあみ
江戸本所の地名。
📙下屋敷
しもやしき
大名が江戸郊外などに持つ別邸。
📙黒板塀
くろいたべい
黒い板で作った塀。
📙椎
しい
常緑樹。
📙みず楢
みずなら
落葉樹。作中では樹木名として登場。
📙鄙びた
ひなびた
田舎めいた、素朴な趣がある。
📙庇合
ひあい
家と家の庇の間、建物の隙間。
📙因業大家
いんごうおおや
がめつく意地の悪い大家。
📙裏長屋
うらながや
表通りから奥に入った庶民向けの長屋。
📙白粉
おしろい
化粧用の白い粉。
📙金時
きんとき
赤い顔の金太郎にちなむ表現。
📙嬌めかしい
なまめかしい
色っぽく艶がある。
📙熨斗屋
のしや
熨斗や紙製品を扱う店か。作中の町人として登場。
📙背縫い
せぬい
着物の背中中央の縫い目。
📙下前
したまえ
着物を重ねたとき内側になる前身頃。
📙紬縞
つむぎじま
紬織の縞柄。
📙米沢織
よねざわおり
米沢地方の織物。
📙茶格子
ちゃごうし
茶色系の格子柄。
📙緞子
どんす
高級な絹織物。
📙涅槃会
ねはんえ
釈迦の入滅を偲ぶ法会。
📙帷子
かたびら
夏用の単衣の着物。
📙小袖
こそで
袖口の小さい着物。
📙黒羽二重
くろはぶたえ
黒い羽二重の絹織物。礼装用の高級素材。
📙上り端
あがりばな
土間から座敷へ上がるところ。
📙節句
せっく
季節の節目の祝い日。
📙節期ばたらき
せっきばたらき
期限・締切間際に慌てて働くこと。おしずは「節句ばたらき」と言い間違える。
📙絵解き
えとき
意味や由来を説明すること。
📙幡随院長兵衛
ばんずいいんちょうべえ
歌舞伎などで知られる侠客。おしずは「ばんずいの長兵衛」と言う。
📙水野の屋敷
みずののやしき
幡随院長兵衛の逸話・芝居に関わる場面。