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#謡曲語
#観世流
#日髙徹郎
謡曲には節(ふし)の部分と詞(ことば)の部分があります。
詞は観衆に対するものと特定の相手に対するものと独りごとの3つに大別されます。
朗読者としての私は詞を大事にしているわけですが、
中でも相手に対して過去の出来事や由緒などを物語る「語(かたり)」というものに
ひときわ興味を持っています。
「語」は謡曲において重要な聞かせどころとなっていますが、
節という音階的なものを伴わないだけにやりがいがあります。
趣味として続けている謡曲の中より
いくつかの「語」を実際に声に出して、ここで取り上げてみようと思います。
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(その四) 観世流謡曲「隅田川」より
さても去年三月十五目。しかも今日に相当て候。
人商人の都より。
年の程十二三ばかりなる幼き者を買ひとりて奥へ下り候ふが。
此幼き者。いまだ習はぬ旅の疲にや。以ての外に遺例し。
今は一足も引かれずとて。此川岸にひれふし候ふを。
なんぼう世には情なき者の候ふぞ。
此幼き者をば其まゝ路次に捨てゝ。商人は奥へ下つて候。
さる間此辺の人々。此幼き者の姿を見候ふに。
よし有りげに見え候ふ程に。さまざまに痛はりて候へども。
前世の事にてもや候ひけん。たんだ弱りに弱り。
既に末期と見えし時。おことはいづく如何なる人ぞと。
父の名字をも国をも尋ねて候へば。
我は都北白河に。
吉田の何某と申しゝ人の唯ひとり子にて候ふが。
父には後れ母ばかりに添ひ参らせ候ひしを。
人商人にかどはされて。
かやうになり行き候。郡の人の足手影もなつかしう候へば。
此道の辺に築き籠めて。しるしに柳を植ゑて賜はれと
おとなしやかに申し。念仏四五返称へつひに事終つて候。
なんぼうあはれなる物語にて候ふぞ。
朗読(語り):日髙徹郎
Ted Hidaka