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【あらすじ】
暴君として知られる郡上八幡城主の嫡男、金森頼門。心優しく文弱な彼は、父の悪政に心を痛める日々を送っていた。ある日、山狩りの最中に家臣とはぐれ、山中深く迷い込んだ頼門は、怒れる領民に襲われ、身ぐるみ剥がされてしまう。
まさにその時、彼は山中で暴漢に襲われる絶世の美女・桂を救う。彼女の父・遠藤主膳は、かつてこの地を治めた旧領主の末裔であった。
頼門は素性を隠したまま主膳の庵に逗留し、清らかな桂と恋に落ちる。しかし、正体を明かした時、主膳から突きつけられたのは、あまりにも過酷な条件だった。
「百姓を救うため、父を討ち、金森家を潰せ。さすれば娘を授けよう」
愛か、孝か、それとも正義か。一人の若殿が、己の運命と万民の命を懸けて下す、日本一の決断とは。
【主な登場人物】
金森 出雲守 頼門(かなもり いずものかみ よりかど): 主人公。暴君の養子だが、心優しく正義感の強い美青年。通称は土岐亥太郎。
桂(かつら): 山中に住む絶世の美女。旧領主・遠藤家の血を引く姫。
遠藤 主膳(えんどう しゅぜん): 桂の父。かつての美濃国主・遠藤家の末裔で、山中に隠棲している。
金森 兵部少輔 頼錦(かなもり ひょうぶのしょうゆう よりかね): 頼門の養父(血縁上は叔父)。領民を苦しめる暴君。
遠藤 盛近(えんどう もりちか): 物語の語り手。遠藤主膳の子孫。
② 作者紹介
野村 胡堂(のむら こどう)
1882年(明治15年)生まれ、岩手県出身の小説家、音楽評論家。本名は野村長一。
新聞記者として活躍する傍ら、1931年(昭和6年)に連載を開始した時代小説『銭形平次捕物控』で国民的な人気作家となる。「投げ銭」で犯人を捕らえる岡っ引・銭形平次の活躍は、戦前戦後を通じて長く愛され、映画やテレビドラマで数えきれないほど映像化された。
また、あらえびす名義でのクラシック音楽評論でも知られ、多方面で才能を発揮した。1963年(昭和38年)没。
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