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針売りとして諸国を歩いていた日吉は、尾張へ戻り、ついに若き織田信長の姿をこの目で見ようと庄内川へ向かう。世間では「大うつけ」と噂される信長だったが、日吉が見たのは、水馬・渡河戦・兵の調練に励む、鋭く激しい若き将の姿だった。
命がけで信長の馬前へ飛び出した日吉は、「お召し仕えください」と直訴する。その熱意を見抜いた信長は、日吉を召し抱え、日吉は木下藤吉郎として侍奉公への第一歩を踏み出す。
一方、信長の奔放な気性と孤独を案じ続けていた老臣・平手中務政秀は、死をもって主君を諫める。信長はその忠義に涙し、政秀寺を建てて、爺と慕った老臣の魂を弔う。
大うつけと呼ばれた若き信長。
猿と呼ばれた日吉。
二人の運命が、ここに交わり始める。
人物
説明
📗日吉 / 木下藤吉郎
のちの豊臣秀吉。十八歳。針売りとして各地を歩いた後、信長に直訴して召し抱えられる。信長から名乗りを許され、木下藤吉郎となる。
📗織田信長 / 上総介信長
尾張の若き領主。世間では「大うつけ」と噂されるが、実際には軍事訓練に熱心で、鋭い観察眼と激しい気性を持つ。
📗乙若
織田家の足軽。日吉の亡父・弥右衛門の旧友。日吉を叱りながらも案じている。
📗乙若の妻
日吉を気の毒に思い、乙若の叱責をなだめる。西瓜を出して日吉をもてなす。
📗お奈加
日吉の母。藤吉郎となった息子の帰郷を涙ながらに喜ぶ。
📗おつみ
日吉の姉。刈入れの手伝いに出ている。藤吉郎が出世したら嫁入り道具を用意すると語られる。
📗筑阿弥
日吉の義父。直接登場は少ないが、日吉が実家へ帰りにくい理由として存在する。
📗木下弥右衛門
日吉の亡父。元・織田信秀の足軽。日吉は父の縁を頼りに信長へ仕官を願い出る。
📗市川大介
織田家の弓道・槍術の師範。庄内川の軍事訓練で信長と激しく渡り合う。
📗平田三位
信長の兵学の師。調練後に戦法の講評をする役割を担う。
📗平手中務政秀
信長の守役であり老臣。信長を幼少から育てた忠臣。主君を諫めるため自害する。
📗平手五郎左衛門
平手政秀の長男。名馬「野分」をめぐり信長と衝突する。
📗平手監物
平手政秀の次男。父に呼ばれて兄とともに最後の酒席に同席する。
📗平手甚左衛門
平手政秀の三男。他国の縁家にいて、この場には不在。
📗雨宮勘解由
平手政秀の用人。政秀の最期の準備をそばで支える。
📗斎藤道三秀龍
美濃の実力者で信長の舅。正徳寺で信長と会見し、その器量を見抜く。
📗春日丹後
斎藤家の老臣。正徳寺で道三の意向を受けて応対する。
📗堀田道空
斎藤家の家老。正徳寺で信長を案内し、道三との対面を取り持つ。
📗平手中務の子ら
五郎左衛門・監物・甚左衛門。父の忠義と死を通じて、信長への節義を託される。
📗柴田権六勝家
信長の家臣。平手政秀とは別系統の若い勢力として言及される。
📗林美作
信長の家臣。柴田権六とともに、政秀が危惧する新勢力として語られる。
📗松下嘉兵衛
以前、日吉に金を与えた人物として触れられる。
📙足軽組
あしがるぐみ
下級歩兵の組織。戦国期の軍事編成の一部。
📙組長屋
くみながや
同じ組に属する足軽などが住む長屋。
📙閾
しきい
家の出入口の下の横木。ここでは「家の中へ入る」ことの象徴。
📙身装
みなり
服装、身なり。
📙困憊
こんぱい
疲れ切ること。
📙針売り
はりうり
針を売り歩く行商。日吉の漂泊時代の仕事。
📙非番
ひばん
勤務のない日。
📙水馬
すいば
馬を水に入れて泳がせる訓練。戦国期には軍事訓練の一環。
📙川狩
かわがり
川辺での狩猟・軍事訓練。ここでは遊興ではなく実戦訓練に近い。
📙庄内川
しょうないがわ
尾張を流れる川。信長の水馬・渡河訓練の舞台。
📙鬨の声
ときのこえ
戦いの際に上げる掛け声。
📙渡河戦
とかせん
川を渡りながら戦う訓練・戦闘。
📙陣幕
じんまく
陣地に張る幕。軍勢の本陣や区画を示す。
📙竹槍
たけやり
竹で作った槍。訓練用として使われる。
📙帷子
かたびら
夏用の薄い衣。
📙具足
ぐそく
甲冑。武具一式。
📙朱太刀
しゅだち
赤く装飾された太刀。ここでは信長の華やかさを示す。
📙生擒る
いけどる
生け捕りにすること。
📙小屋 / 仮屋
こや / かりや
野外での一時的な控え所。
📙狂児像
きょうじぞう
常軌を逸した若者としての信長像。ここでは世評と実像の二面性を示す。
📙吉法師
きっぽうし
信長の幼名。
📙上総介
かずさのすけ
信長の官途名。
📙守役
もりやく
幼少の主君を養育・補佐する役目。
📙傅役
もりやく / ふやく
守役と同じく、若君を教育・補佐する役。
📙織田備後守信秀
おだびんごのかみのぶひで
信長の父。
📙内裏
だいり
天皇の御所。
📙築土
ついじ
土を突き固めて作った塀。
📙伊勢外宮
いせげくう
伊勢神宮の外宮。
📙大うつけ
おおうつけ
大馬鹿者、大変な愚か者という意味。信長への悪評。
📙正徳寺
しょうとくじ
美濃・尾張国境の富田ノ庄にあった寺。信長と道三の会見場所。
📙富田ノ庄
とみだのしょう
美濃・尾張国境の地。
📙斎藤道三秀龍
さいとうどうさんひでたつ
美濃の大名。信長の舅。
📙聟
むこ
娘の夫。信長は道三の聟にあたる。
📙舅
しゅうと
妻の父。道三は信長の舅。
📙茶筅むすび
ちゃせんむすび
髪型の一種。髪を茶筅のように結う。
📙打紐
うちひも
衣服や髪などを結ぶ紐。
📙帷子
かたびら
薄い単衣の衣。
📙熨斗つき刀脇差
のしつきかたなわきざし
熨斗のような飾りをつけた刀と脇差。奇抜な装いの描写。
📙七五三縄
しめなわ
神事などで使う縄。信長が刀に巻く奇抜な装いとして登場。
📙火打袋
ひうちぶくろ
火打石などを入れる袋。
📙印籠
いんろう
小物や薬を入れる携帯容器。
📙根〆
ねじめ
装飾用の留め具・飾り。
📙折目袴
おりめばかま
きちんと折り目をつけた正式な袴。
📙裃
かみしも
武士の正式な礼装。
📙色代
しきたい
挨拶、応対の礼。
📙膳部
ぜんぶ
食事、料理の膳。
📙湯漬
ゆづけ
飯に湯をかけた食事。
📙卯月
うづき
信長の愛馬の名。
📙黒鹿毛
くろかげ
黒みを帯びた鹿毛の馬。
📙名馬・野分
のわき
平手五郎左衛門の愛馬。家宝の茶碗を売って手に入れた。
📙鎧 / 鞍
あぶみ / くら
馬具。本文の「鎧」は文脈上、鐙や馬具まわりの描写として注意。
📙草履取
ぞうりとり
主君の草履を扱う小者。藤吉郎が昇格する役目。
📙御小人組
おこびとぐみ
城内の雑役・小者の組織。藤吉郎の初期の勤め先。
📙出仕
しゅっし
主君のもとへ勤めに出ること。
📙孤君
こくん
孤立した君主。作中では信長の孤独な立場を指す。
📙苦諫
くかん
相手のために厳しく諫めること。
📙自刃 / 自害
じじん / じがい
自ら命を絶つこと。平手政秀が信長を諫めるために行う。
📙政秀寺
せいしゅうじ
平手政秀を弔うため、信長が建てた寺。
📙回向
えこう
死者の成仏を願って供養すること。
📙菩提
ぼだい
死者の冥福、または成仏。
✿作者と作品について
◆作者:吉川 英治(よしかわ えいじ)
1892年(明治25年)- 1962年(昭和37年)。日本の大衆文学を代表する小説家。神奈川県出身。本名は英次(ひでつぐ)。『宮本武蔵』『三国志』『私本太平記』など、歴史を題材にした数多くの国民的ベストセラーを執筆し、「国民文学作家」と称された。その作品は、平易でありながら格調高い文章で、幅広い読者層から支持を得ている。1960年、文化勲章受章。
◆作品:『新書太閤記』(しんしょたいこうき)
吉川英治が1938年(昭和13年)から新聞連載を開始した歴史小説。豊臣秀吉の生涯を、織田信長に仕える以前の若き日から天下統一を成し遂げるまで、生き生きと描いている。本作は、従来の講談や立身出世物語としての秀吉像に、人間的な深みと魅力を与え、新たな「太閤記」として絶大な人気を博した。戦国時代の動乱を背景に、秀吉をはじめとする武将たちの葛藤や野望、人間模様が巧みに描出されている。
■青空文庫、山本周五郎作品他、著作権きれた文芸多数
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